張松原に出て、空を眺めてゐますと、日のある方から何やら白いものが落ちて来るやうですから「ハテ何だらうか」と、瞳《ひとみ》をこらして見てゐると、それは段々近くなつて一羽の鶴《つる》であることが分りました。するとまたその後から黒い大きなものが降りて来ますから、いよ/\変だと思つてゐると、それは一羽の大鷲《おほわし》で、鶴をめがけて、追うてくるのだと分りました。
 鶴は悲しい声を出して、一生懸命に逃げて来ますが、鷲はその強い大きな翼を搏《う》つてすさまじい勢で風をきり、たちまちに追ひ付き、その鋭い爪《つめ》と嘴《くちばし》とで、鶴を突いたり、蹴《け》つたりするので、空は鶴の白い羽がとび散り、まるで雪がふるやうでした。鷲は鶴を引浚《ひきさら》つていくつもりですが、鶴も今は必死ですから、その長い嘴《くちばし》を槍《やり》のやうに使ひ、その羽に力をこめてふせぎながら、隙《すき》があつたら逃げようと、だんだん下へ/\と舞ひ下つて来ました。
 子良はそれを見て、鶴がかはいさうになりましたので、どうにかして助けてやらうと思ひ、手に小石を拾つては鷲をめがけて投げつけました。始めのうちは遠いのでなか/\とゞ
前へ 次へ
全9ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング