たれ》にも言つてはいけないぞと、伯良が言つたのでした。
「あゝ有難い、それでは直《す》ぐそれを着て、天に昇りませう。」
天人は大喜びで、伯良が沖に漁に出た留守を見はからひ、そのつづらの中から天の羽衣を出して、着ました。さて子良を背《せな》におぶつて、天へヒラ/\/\と昇らうとしました。ところがドツコイそんなうまいことは出来ません。如何《いか》に昇らうとしても、身体《からだ》がちつとも浮かないのです。
「ハア悲しい。困つた。」
と、天人は目に涙をためて、口惜《くや》しがりました。
「子良や迚《とて》も此《この》羽衣だけではお前までつれて昇る力がありません、お前は此地《このち》にピツタリとくつついて離れることの出来ない人間の血をうけてゐるから、なかなか重たくて迚もダメです。」
「ではおつ母《か》さん、僕《ぼく》つれていかないの。どうしてもいけない?」
「ダメ/\、あとで、また何とかしませう。今はダメ。誰かに見付かつて、又羽衣をとられるといけないから、お母さんは直ぐ帰ります。待つておいで、左様なら、左様なら!」
天人は子良が自分を慕つて泣くのに引かされ、自分も涙を流しましたが、故郷《ふる
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