よく似てゐるの。」
「ウン、それぢや、僕も行つてみたいな。おつ母《か》さん、僕《ぼく》をつれて行かない、天へ遊びに。」
 天人は悲しさうに頭をふりました。そして天《あめ》の羽衣といふものが無ければいかれない。その羽衣は、伯良《はくりやう》がどこかに隠してゐて、どうしても渡して呉《く》れないから、迚《とて》もその望みをかなへることは出来ないと、言ひました。


    三

 それから又《また》三日ばかり経《た》つて、天人が空を眺《なが》めてゐますと、子良《しりやう》がこつそりと来て、その袖《そで》を引いて、囁《ささや》きました。
「あのね、羽衣の在所《ありか》が分つたよ。」
「えつ、本当かい。」
と、母の天人は眼《め》を丸くしました。
「本当とも、けれどもね、僕《ぼく》には取れないところにあるんだ。」
 子良は、今朝お父さんの伯良《はくりやう》が、天井裏にある網を下すとき、小さなつゞらを、一緒におろし、その蓋《ふた》をあけたら美しい着物が出て来たので、何かと訊《き》いてみたら、之《これ》は天《あめ》の羽衣といふものでお母さんがお嫁に着て来た大事なものだ。他人に知れると盗まれるから、誰《
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