《よろこ》びながら、二軒三軒と廻《まは》つてあるいてゐるうち、段々と眠たくなつて来ました。
「どうしたものだらう。あんまり喰べ過ぎたせいかしら。」
 神主さんはお腹《なか》のへんをさすつてみますけれど、お腹《なか》はげつそりとしてをります。寧《むし》ろ狼《おほかみ》のやうに腹が背骨にくつゝいてをります。そしてその飢《ひも》じいことゝいつたら、何ぼたべても追ひ付きません。
「神主さんは、御病気ぢやございませんか、大層お顔がお痩《や》せになりましたが。」
 或家《あるいへ》ではかう言はれました。
「いゝえ、どう致しまして。……たゞ余り遠いところを急いでまゐりましたので、お腹《なか》がすいたのです。」
 神主さんは情ない声を出しました。心のうちでは――
「どうやら、これは蛇いちごが利きすぎた。」と、思つてゐますがそんなことは言はれません。
「おや、それぢや何か召上るものをさし上げませう。」
 そこの家《うち》では先づ御馳走から出しましたので、神主さんはがつがつと四人分もたべて、大きなお腹《なか》をかゝへながら、やつこらせと、神前に坐《すわ》つて、ムニヤ/\と祝詞をあげ始めました。
 家《うち
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