の中で、首や手足を出して荒れまはる。蛇は苦しいから、立木にまきついて締めると、亀はその手足の爪《つめ》で、蛇のお腹《なか》をガサ/\引掻《ひつか》いて、とう/\その腹を裂いて、出てしまふ。」といふ話でした。
「しめた/\。」と、も一度神主さんは叫びました――
「この蛇いちごをもつて行かう。そして祝詞を上げてゐるうちにそれをたべては、水を飲んでをらう。さうしたら直ぐお腹があの蛇のやうにすいて、どこへいつてもありつたけの御馳走がたべられる。」
神主さんはそこらぢうを捜して、沢山蛇いちごを集めて袂《たもと》に入れて、いそ/\と氏子の家へ行きました。
さて神主さんは神前に出て、祝詞をあげながら、
「かけまくも畏《かしこ》き……ムニヤ/\、大神《おほがみ》の大前《おほまへ》にムニヤ/\……。」と、ちつとづゝ蛇いちごをたべては、お水をいたゞいてゐますと成程どうも不思議にお腹《なか》がすいて来ます。そして祝詞が終る頃《ころ》にはもう飢《ひも》じくて/\気が遠くなる程になるので、出された御馳走を、まるで餓鬼のやうにがつ/\がぶ/\と喰べたり、飲んだりして、
「マアこれでよろしい。」と、ほく/\悦
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