》の者どもは神主さんが余りに意地汚く喰べたのに驚いてをりました。
 そのうちに奥の方で祝詞をあげる神主さんの声が段々と低くなつて、とう/\しまひには聞えなくなりましたので、不思議に思つて、そこの奥さんが行つてみました。すると神棚の前には神主の坐つてゐたところに、その衣物《きもの》やら、袴《はかま》やらがあります。それもちやんと人が着てゐたまゝで、丁度その中から身体《からだ》だけを引つこ抜いて取つたやうになつてゐました。変なこともあるものだと、家《うち》の人達《ひとたち》を呼んで、捜してみても神主さんの姿はどこへ行つたか見えません。衣物や袴をといてみますと、そのあとには水が沢山|溜《たま》つてをりました。そして衣物の袂から、蛇いちごが四つ五つ出てきました。そのときそこへ来合せてゐた百姓の十袈裟《とけさ》といふ男がそれを見付けて、かう申しました。
「分りました。神主さんは溶けて水になつてしまつたのです。」
「それはどういふわけです。」と、皆が聞きかへしました。
「御覧なさい。」と、十袈裟は蛇いちごをさして申しました。
「この蛇いちごを神主さんはたべたにちがひありません。私《わたし》が山の畑
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