し潰《つぶ》されるといけないからね。」と、いゝ気嫌《きげん》になつた孫の巨人は、今度は肉を削つた西瓜の中に二人を入れて、飼つて置くことにしました。
 二人はもう逃げようとて逃げるわけにはまゐりません。仕方なく/\御飯の代りに西瓜を喰《た》べて、孫から言ひつけられるとほりに歌を唄ひ、あぢきない日を送つてをりました。

 或日のことでした。おぢいさんの巨人は、孫に申しました。――
「これ/\孫や、俺《わし》にお前の虫を貸してくれまいか。」
「おぢいさん、貸してあげてもいゝですが、何をなさるんですか?」
「あのね、あの虫は大変賢いだらう。だから俺《わし》の鼻の孔《あな》に沢山毛が生えて、垢《あか》もついてゐるから、毛をかつたり垢を掃除したりさせるのだよ。」
「ぢや貸しませう。」
 そこで仙蔵と、次郎作は、鎌《かま》と鍬《くは》とをもたされて、おぢいさんの巨人の鼻の中へ入ることにされました。そのとき、仙蔵は次郎作にむかつて申しました。――
「さあ愈々《いよいよ》危いときが来た。今までは二人一緒だつたが今度は鼻の孔《あな》に別々に入るのだ。だから若《も》しかすると、それつきりで、もう会へなくなる
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