の巣のやうに穴をあけた。もしその一発でもが、積んでゐる水雷か、砲弾にか当らうものなら!
そのうち、だん/\時が経《た》つにつれて、海図室をやられる。操舵機《さうだき》をこはされる。おまけに大事な前部の十二サンチ砲は敵弾を受け、砲身が曲つたり砲架をいためられたりして、砲員も死傷して、とう/\二門とも発砲が出来なくなつた。後部の二門もこの時、別な理由でだめになつた。
「弾薬がつきました。監督大尉!」
後部の掌砲兵《しやうはうちやう》が悲痛の声を絞つて、伝声管《ボーイス・チユーブ》に口を寄せて叫んだ。けれども伝声管《ボーイス・チユーブ》はもう敵弾にいたんでゐるので、船橋《ブリツヂ》へは通じない。よし通じても、監督の堀大尉は戦死してゐた。砲のことは素人の船長には分らない。いや、その船長も既に重傷を負うて、船の指揮は今一等運転士がつかさどつてゐる。
「せめてもう一発でも――畜生もう一発あれば、あの艦橋《ブリツヂ》にドカンと打《ぶ》つくらはしてやるんだが! ちえツ、残念だ!」
掌砲長が砲の把手《ハンドル》を握りしめて、口惜しさうに敵を睨《にら》んで叫ぶのを、嘲笑《あざわら》つてでもゐるやうに
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