怪艦ウルフ号
宮原晃一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)欧洲《おうしう》大戦の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)電気|釦《ぼたん》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とぐろ[#「とぐろ」に傍点]を巻いた

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そろ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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    一

 時は欧洲《おうしう》大戦の半ば頃《ごろ》、処《ところ》は浪《なみ》も煮え立つやうな暑い印度洋《いんどやう》。地中海に出動中の日本艦隊へ食糧や弾薬を運ぶ豊国丸《ほうこくまる》は、独逸《どいつ》商業破壊艦「ウルフ号」が、印度洋に向つたといふ警報を受けたので、帝国軍艦「伊吹《いぶき》」の保護を求めて、しきりに無電をかけながら、西へ西へと進んでゐた。
 前部甲板の日覆《ひおひ》の下には、とぐろ[#「とぐろ」に傍点]を巻いたロープを椅子《いす》代りに腰掛けた二人の少年が話してゐる。水夫の服装をした少年は下村《しもむら》といつて当年十八歳、もう一人は中原《なかはら》とい
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