さつき船橋《ブリツヂ》で船長にさう言つてゐた。」
下村は自分が何でも知つてゐるやうに意気込んで話した。
中原はしばらく黙つてゐたが、そろ/\と言つた――
「それもよからう。だが、僕《ぼく》なら、魚雷を使つて、あべこべに敵艦を撃沈してやるねえ。」
「えツ! 魚雷? この船に魚雷なんて無いぢやないか。」
「いや、ある。地中海の駆逐隊《くちくたい》へ送る分が二十発ばかり積み込んである。しかも大型の二十一インチだからね。補助巡洋艦なんか、こいつを一発くらへば、木葉微塵《こつぱみぢん》だ。」
「さうか。けれども、そいつを発射する発射管がなからう。」
「いや、魚雷は発射管がなくたつて、使へるものだよ。僕の親父《おやぢ》は水雷専門の兵曹長《へいさうちやう》で水雷のことなら、僕も小さい時から、見たり、聞いたりして、よく知つてゐるんだ。実は僕、この間から、万一の場合には使つてやらうかと思つて、積んであるやつを調べて見たんだがね、ちやんと圧搾空気《あつさくくうき》もはいつてゐるし、恐しい爆薬をつめた実用頭部も取りつけてあるんだ。僕がちよつと仕掛をすれば、すぐ走つて行くやうになつてゐるんだ。」
「さうか
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