言つて、鳥や獣や、それから人間もこしらへて、住まはせようと、まづ、草や木の種子《たね》をお播《ま》きになつたのが、ほんの少しばかり芽を出しかけてをりました。それだのに悪魔どもがこの大戦争を始めましたおかげで、せつかくの神様の思召《おぼしめし》も無駄《むだ》になつて、そんなものは皆踏みにじられ焼き枯らされてしまひました。
けれどもこの悪魔のうちに、一|疋《ぴき》の大きな悪魔がゐました。この悪魔は体が大きいばかりでなく、魔術を一番沢山知つてゐて、元は神様の御使ひの一等よい一人でありましたから、よく神様の御心《みこころ》を察することが出来ました。ですから、自分では余り戦争なんて下らないことはしないで、他の悪魔が一生懸命に生命《いのち》の取遣《とりや》りをしてゐるのに、お尻《しり》をそこにドツカと据《す》ゑ込み、煙草なんか吹かして、たゞ見てゐるだけでした。
ところが、こんなに戦争がひどくなると、大悪魔はお日様が曇るやうな大きな眉《まゆ》のよせ方をして、独り言を申しました。
「これはどうも賢いことでない。こんなに大きな戦争を永く続けては、しまひには我々悪魔の種族は皆殺されて、根絶やしになつて
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