しまふ。ひよつとしたら、神様もそのつもりで、黙つて、内輪喧嘩をおゆるしになつてゐるのかも知れない。せつかく神様がお播きになつた木や草の種子までも、悪魔が踏み荒しても黙つておいでなさるところを見ると、これからおつくりになる人間にこの世界を渡してしまふため、先づ悪魔同志喧嘩をさして、悪魔が自分から滅びるやうにお仕掛なすつたかも知れない。これは早く戦争をやめさしたがいゝぞ。」
で、大悪魔は大きな声で叫びました。まつたく大きな声――まるでお寺の鐘を千も一時に搗《つ》き鳴らしたやうな大きな声で、ゴーンと山から山へ、谷から谷へ響き渡るほどの声で叫びました。
「皆しづまれツ! 戦争|止《や》めツ!」
とにかく、大悪魔の声に、戦争は一時中止されました。けれども平和会議を開いて、今後は悪魔の仲間では、戦争をしないことにきめなければなりません。
さて当日の会議には例の大悪魔が大演説をやりました。
「諸君、私《わたし》は神様が人間といふものをこの世界におつくりになつて、それに世界ぢうのものを皆与へ、世界の主とする御決心をなさつたことを勘付きました。諸君の足の下に踏みにじつた草や木の芽生えはその人間にお
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