の仏像には人がさはつた証拠よ」
「やあ、すつかり感心しました」と、守備隊長は頭を下げました。「お姫様のお目はするどいですなあ」
「なるほど、ニナール、お前はえらい。だが、仏像のどこにジウラがかくしてあるのかい」
「さあ、仏像の中か、どこか分りません。でも、あの縞が終つてゐるお腹《なか》の横に光つた小さな石が見えるでせう。多分、あれを押すと、どこか秘密の戸口があくんぢやないか知らと思ひますわ。お母様が、ラマ仏には、そんな仕掛のしたのがあるつて、お話をなさつたことをおぼえてゐますもの」
守備隊長はすぐ仏像の台坐にのり、その光つた石を押すと、ぎつと音がして、仏像は前の方へ動き出して、あとには人のはいれるやうな穴が一つ、牀《ゆか》にあきました。
「ジウラさん!」と、叫びながら、ニナール姫はその穴に電気をさしこみのぞきました。「ジウラさん、しつかりなさいよ! 私達《わたしたち》、助けに来たのよ!」
ジウラ王子は、穴の中に、ぐつたりとなつて、仆《たふ》れてゐましたので、守備隊長がすぐそれを抱き上げて、牀の上にねかすと、ニナール姫はその口に手を当てがつて、息があるかを確めてみながら、
「ジウラさ
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