ん、ジウラさん、しつかりしてよ! あたしよ、ニナールよ!」
と、心配さうに叫びました。けれども、ジウラ王子は目も開けなければ、動きもしません。勇敢で賢いニナール姫も、やつぱり少女です。かうなると、もう泣声になつて、
「お父様、どうしませう。ジウラさんがこのまゝ死にでもしたら、あたしが殺したやうなものですわ。どうかして頂戴《ちようだい》よ。早く/\」
「いや、ジウラを死なしちや、お前ばかりか、わしの責任ぢや。早く城へつれて行つて、松本《まつもと》先生に手当をして貰《もら》はなけりや」
ジウラ王子はすぐお城へ運ばれ、侯の侍医をしてゐる日本人の松本氏に診察して貰ひました。別にどうしたといふわけでもなく、只《ただ》驚きの余り気絶してゐたのでしたから、間もなく息を吹き返しました。
枕元《まくらもと》にすわつて、心配してゐたニナール姫はやつと安心しましたが、それでも、目には涙をためて、言ひました。
「ジウラさん、御免なさいね。もう、肝《きも》ためしだなんて、あんな危ない目に貴方《あなた》を、あはしませんわ。あたし本当に馬鹿《ばか》だつたのねえ。でも、貴方、これから強く/\なつて、成吉斯汗《ジン
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