びよせ、そのお相手になさつたのです。ジウラ王子は蒙古の王様のうちでも、成吉斯汗《ジンギスカン》のすゑだとよばれる名家の子でした。が、不幸にして早く、お父様になくなられ、それから又、近頃、お母様も死んで、孤児《みなしご》になつてゐました。だから、キャラ侯は王子の為《ため》にもよからうと思つたのです。
 ところが、ジウラ王子は年こそニナール姫よりも一つ上でしたけれど、身体《からだ》もやせて、小さく、青い顔をして、いつも隅《すみ》の方へ引つ込み、だまつてばかりゐるのでした。しかも、そのくせ、ゐばりやさんで、どうかすると「おれは蒙古の王子だぞ」といふやうに、高慢な顔をしますから、大勢の召使ひたちから、軽蔑《けいべつ》されたり、いやがられたりするだけで、一向、ニナール姫のさびしさを慰める役にはたちません。
 尤《もつと》も、ニナール姫の方だけでは、ジウラ王子がゐやうがゐまいが、そんなことはどうでもいゝので、以前とかはりなく、朗らかで、活溌《くわつぱつ》で、勇ましい男もかなはないほど大胆で、馬に乗り、鉄砲をうち、せい一ぱいにあばれてをりました。
 然《しか》し、うはべはさうでも、やはり女のことです
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