のは、油断だ。しかし、流れが早いから、助かりやしまい」
守備隊長は自分で自分を慰めて、それからキャラ侯に向つて、
「閣下、鞭など使はずに、あんな悪魔は、すぐ首《くび》を叩《たた》つきつておしまひなされば、ようございましたのに!」
「いや/\、あんな者を切つちや、刀の汚れだ」
と、侯は言ひながら、鞭を二つにへし折つて、別々になげすてました。
五 袋の鼠
塔の中では馬賊が一人、番に残つてゐました。首領が二三人手下をつれて迎へにくるのを待つてゐるのでした。
すると、少時《しばらく》たつて、外で、何やら人のけはひがしたやうで、草やぶの鳴る音も聞えたやうでした。
「ハテな、迎へに来たのにしちや、少し早いぞ」と、馬賊は首を傾《かし》げました。
「ことによつたら、あの子供をお城の者がさがしにでも来たかしら」
馬賊は目じるしにならないやうに、急いであかりを吹き消しました。このときは、実はニナール姫の指図で、武装兵がこつそりと塔を囲んだときでした。
それから、またしばらくして、今度は、はつきり二三人の足音が聞えました。
「来た/\、いよ/\親分が来た」
馬賊は悦《よろこ》んで、
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