するない。手前《てまい》は鷲《わし》でもまだ羽の生えそろはない子供だ。そんな大それた真似《まね》をするのは、早いぞ!」
アルライはまつかな顔をして、一生懸命にその手をもぎ放さうとしましたが、なか/\放れません。その額には、今打たれた鞭の痕《あと》が、醜くついてゐました。
その途端、戸が開いて、守備隊長が、二人の兵をつれて、はいつて来ました。それを見ると、アルライはありつたけの力を出してウラップの手をふりきつて、みんながアツといふ間に、窓にとびのり、すぐその張り出しの上に、すつくと立ちました。下は、二十メートルばかりの高い断崖《がけ》で、その下は底知れぬ深い淵《ふち》です。けれども大胆不敵のアルライは、こつちを見返つて、そのきら/\する短剣をふりまはし、
「親も子も、よく覚えてをれ。アルライ様の仕返しが、どんなに恐ろしいかつてことを!」
守備隊長はすぐ腰のサツクから、短銃を取り出しました。が、ドンといふ物凄《ものすご》い音がその手から起つた瞬間には、アルライの姿はもう深い淵へザンブととび込んでゐました。
「ちえツ! 遁《に》がしたか。まさか、あんなところから飛び込みはしないと思つた
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