ウルドのためには一杯のパン入りミルクが供えてあったことと思います。とにかく、これならば王様の前に供えても恥ずかしくない朝飯でしょう。マイダス王が果してこんな朝飯を食べたかどうかは分らないが、まあこれ以上のことはなかったろうと思います。
 小さなメアリゴウルドは、まだ姿を見せませんでした。マイダスは彼女を呼ぶように言って、朝飯を始めるために食卓について、姫の来るのを待っていました。公平に見て、彼は本当に姫を愛していました。今朝はまた、彼にふりかかって来た幸運のために、その愛情が一層深くなっていました。しばらくするうちに、姫がひどく泣きながら廊下をやって来るのが聞えました。姫が泣くなんて彼には意外なことでした。何故なら、メアリゴウルドは夏の日に遊びたわむれているのをよく見かけるような子供達のうちでも一番元気な一人で、年中ちょっとでも涙を流すようなことのない子でしたから。マイダスは彼女が泣きじゃくるのを聞いた時、あっと驚いて喜びそうなことをやって見せて、可愛いメアリゴウルドの機嫌を直させようと決心しました。そこで、テイブルの上へ乗り出して、彼女の鉢にさわりました。それは支那|出来《しゅったい
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