彼の頭の横っちょにも翼が生えているような気がするのでした。尤もパーシウスがまともに振向いて見ると、何もそんなものは目につかないで、ただおかしな帽子をかぶっているだけでしたが。しかしいずれにしても、あの曲りくねった杖が、クイックシルヴァにとって、たいへん大切なものであることは明らかで、そのために彼がこんなに速く歩けるので、たいそう元気な青年であるパーシウスも、だんだん息が切れて来ました。
『さあ!』とクイックシルヴァはとうとう叫びました――というのは、彼も相当人を喰ったもので、パーシウスが彼と歩調を合せて行くのにどんなに難儀しているかということは、ようく知っていたからです――『この杖を持ち給え。わたしよりもずっと君の方が、それが必要だからね。セライファス島には、君よりも足の速い人はいないのかね?』
『僕だって翼の生えた靴さえあれば、相当速く歩けるんですがね、』と、パーシウスはちらっとずるそうに、彼の道連れの足の方に目をやりながら言いました。
『君にも一足《いっそく》心がけておかなくちゃ、』とクイックシルヴァは答えました。
しかし、さっき貸してもらった杖が、すばらしく彼の歩く助けになった
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