ので、パーシウスはもう少しも疲れを覚えなくなりました。実際、その杖は彼の手の中で生きていて、その生命のいくらかを彼に貸してくれるような気がしました。彼とクイックシルヴァとは、今では、仲よくお話をしながら、楽《らく》に旅をつづけました。そしてクイックシルヴァが、彼の今までの冒険談や、いろんな場合に彼の機転がどんなに役に立ったかというような話を、いろいろ沢山してくれたので、パーシウスは彼を実にすばらしい人だと思うようになりました。彼は如何にもよく世間のことを知っていました。そして青年にとっては、そうしたことをよく知っている友達ほどいいものはありません。パーシウスは、だから、いろいろと話を聞いて自分の機転に磨きをかけたいと思って、一層熱心に耳を傾けました。
そのうちに、ふと彼は、彼等がこれから目指して行く冒険に力を貸してくれる筈になっている姉さんのことを、クイックシルヴァが話していたのを思い出しました。
『その方《かた》は何処にいらっしゃるんです?』と彼は尋ねました。『すぐにはお目にかかれないんでしょうか?』
『正にその時機だという時になったら出て来るよ、』と彼の道連れは言いました。『しか
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