冒険に出して、亡《な》き者にし、その上でお母さんのダネイに対して、何かたいへん悪いことをしようと決心しました。そこで悪者の王様は、ずいぶん暇をつぶして、一体若者が引受けそうなことで、何が一番危険だろうかと考えました。そしてとうとう、彼の注文通り、命にもかかわるようなことになりそうな冒険を思いついて、若いパーシウスを呼びにやりました。
 若者が王宮へまかり出て見ると、王様は玉座に坐っていました。
『パーシウス、』とポリデクティーズ王は、ずるそうに彼にほほ笑みかけながら言いました、『お前も立派な若者になったなあ。お前とお前のよい母親とは、わしの兄弟の漁師からだけでなしに、わし自身にも大変世話になった。だからその幾分なりとも、恩返しするのがいやだとは言うまいな。』
『はい、陛下、』とパーシウスは答えました、『御恩にむくいますためには、命をも惜しみません。』
『うむ、それでは、』と王様は、ずるそうな微笑を唇に浮かべながら、つづけました、『わしはお前に、ちょっとした冒険を頼みたいのじゃ。そして、お前は勇敢な、冒険好きの若者だから、きっとそれを、お前が勲《いさお》をたてるための願ってもない機会にめ
前へ 次へ
全307ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング