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第一の問。貴下は外國では何を勉強して來ました。經濟ですか。
第一の答。私は雜學問をして來たので、何といふ一科の專門はありません。但し學校では經濟科の講義を聽講しました。
第二の問。文學の方はやりませんでしたか。
第二の答。私は學問として文學を修めた事は、日本にゐた時も外國にゐた時も、全くありません。
第三の問。今後職業を擇ぶに就ては保險事業をお擇びですか、又は慶應義塾の文科で教鞭をおとりになりますか。
第三の答。私の父は保險會社に勤めてゐますが、それも家業といふのではなく株式會社の事ですから息子も必ずその仕事をするといふ事はありません。慶應義塾になんか行つたつて教へる學問がありません。
第四の問。貴下の就職問題に就ての御尊父の御意見は。
第四の答。父は私の選擇に任せるでせう。
第五の問。外國の文藝上の新運動について何か話して下さい。
第五の答。別に新運動なんてものは無いでせう。日本の方がその點では新しいでせう。
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恰も五分たつたので自分は最後の一句を冗談にして立上らうとした。するとたつたもう一つ質問し度いと云つて引止められた。
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