だ。一遍見せてからでなくちや話がまづいからね。」
「それは困つた。そんな話ぢやないんぢやないか。」
「君の方があんまり急なんだ。君の方で出来たと云ふことが確になつてから、三四日は置いて貰ふつもりでゐたんだ。掛引上大変に損得があるんだからねえ。こんどの借主どもに対する方策としてもだ、さうせかれちや実際困らあね。」
 彼はかう云つて軽く笑つた。親しい友人に対するある情味が閃かぬでもなかつた。
 白川は仕方がないと思つた。
「ぢや、奥田さんに来て貰はう。金主の代人の人も一緒に来たんだから、少し待つて居てもらつて、現場を見て来ようぢやないか。」
 かうして三人が自動車を※[#「にんべん+就」、第3水準1−14−40]《やと》つて近い郊外へまで行つて、工事施行の場所を一巡して会社へ帰つたのがもう四時を余程過ぎた頃であつた。白川は奥田の進まぬらしい顔付を見て、多少の不安を思つて居た。
 それからの二日間は松村の手都合の為に白川は空待《からまち》をした。日歩は払ふと金主に約束して金主をも待たすことにした。此間に松村は借方即ち工事経営者を呼び寄せて担保や報酬の交渉をした。此方ももとより異論なくきまつた
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