心をして來たが、それが何程の效果もないらしい。女はやはり恐怖、自棄、反抗の氣分から脱け出すことが出來ないのだ。かう思つて來ると亨一は今更自分の過去の罪惡を考へずに居られなかつた。
自分はかう云ふ暴逆的×××主義を宣傳する積《つもり》ではないのであつた。自分が云つた改革は、訓練と教育の力を待つて、自然に起こる變化の道程を示すと云ふことであつた。自分が呪つた權力は現在の政治が有つてゐるそれでは勿論ない。理想の上の妨害物たる權力そのものを指すのであつた。自由の絶對性を考ふるとき、一切の拘束力を無視しなければならないと云ふときの意味であつた。それを多くの者は混同させてしまつた。理想を云はずに現實を見た。今の政治が自由を奪ふと見た。同志と稱する者がかう云ふ間違つた見方をした丈《だけ》であるならまだよかつたが、政治家の多數が亦觀察を誤つた。そして謬見《びうけん》を抱いて社會の繼子《まゝこ》となつた人々に對して、謬見を抱いた政治が施された。脅迫觀念は刻々時々に繼子共の上を襲つた。その襲はれた人の中にすず子があつた。自分自身もをつた。不知《しらず》不識《しらず》自分も矯激な言動をするやうになつた。も
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