どうかということは疑わしいものであります。おそらくは至難であり、いや不可能かとさえ思われてならないのであります。もちろん、究めるほどその真相へ近づくことはできるかも知れません。が、これについては、日常、自身直接その科学に従事されておられる学者は、十分その点を理解されております。かの科学に従事されている学者の方々が、しかも権威ある方々が、いや権威ある方々ほど、「調べれば調べるほどわからなくなる」といっておられます。また、大学卒業以来大学の教授として長い間研究を続けられ、その後停年制のために、惜しくもその席をお引きになったその時の御感想に、「どうも卒業した当時が一番ものが判っておったような気がする。ところが、卒業後、今度はいよいよ直接自分でその研究に携わって見れば、今までのいずれの研究に対しても、ただ、疑問が深まるだけで、何一つ判らなくなってしまった」と述懐になっておられます、そういったお方を幾人も私は承知いたしております。また、中には、「努力に努力を重ねて行ったならば、やがては、その真相の把握もできるであろうと信じて、毎日研究を続けているのである」といっておられる科学者もございます。しか
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