いった交通機関の発達というものは、その直接の原因は「科学の発達」によるものであることは申上げるまでもない明瞭なことでございます。したがって、現代は交通発達の時代でもありますが、また見ようによっては一面「科学発達の時代」と言う方がより適切かも存じません。すなわちそれは、それらの器機や機関のそのすべてが、科学の力によってできたわけだからでございます。したがって科学が発達すればするほど、そういった便利な器械や器具が発達することになり、ついには御承知の如く、誰言うとなく「科学万能」というような声さえ用いられて来るようになりました。
しかし、科学が万能かどうかということは、科学そのものの本質を考えて見ますれば直ちに解決のつきますことで、なにもそう面倒なことではございません。御承知のように、科学というものは、私どもの持っている五つの感覚を透して、いや五つの感覚だけを透して、物の真相を明らかにしようと努めている、われわれ人類のもつ一つの指向であります。しかし、ちょっとお考えになってもお解りになりますように、必ずしも物の真相が、単にわれわれの持合せている五つの感覚だけで、完全にそれを明らかにし得るか
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