しそれは「信じて」の上のことであり、しかも「やがて」のことであって、決して現在のことではございません。その点をよくよく注意しなくてはならないと存じます。
 早い話が、なるほど今日の科学は、電気や磁気といった物質科学の方面の研究は相当の域にまで進んではおりますが、生命科学の方面では如何でございましょうか、御承知のように、まだアメーバ一匹人工では作られてはおりません。それどころか、その生命の本質究明をその使命とすべき生物科学者が、中には「生命は永遠の謎である」などといって、手を触れそうにもしない学者さえございます。まして、精神科学の方面の如きいかにそれがまだ幼稚であるかは十分想像していただけることと存じます。
 これは、なにもその方面の学者が懶《なま》けているというのでは決してございません。およそ物には順序というものがありまして、まだそこまで進んでおらないということでございます。したがって、実はまだまだ科学万能どころの話ではございません。きわめて初歩の時代であると考えるのが妥当とさえ考えたいのでございます。
 もちろん、私どもは、仮の宿とは承知しながらも、時にはその調べた「事実」に対しまし
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