事ということはまことに意義のある貴い御事業でございますが、そういったふうにすべきではあるまいかと私は堅く信じているものでございます。
 雨も、雪も、風も、寒さも、さては、山も河も、なにも自然という自然に悪いものは一つもない筈であります。善悪はただ人間界だけの問題であります。「溺れた水は、また一面浮ばせる水でもあった」筈でございます。
 この立場からは一木一石も私どもは粗末にしてはならないと考えるのでございます。かのわが信州一帯の主要産業であります夏秋蚕の如き、違うというよりも違わせていると思われる場合が非常に多いようでございます。要するにあれは涼しいことを要求する虫であります。したがって、風通しをよくするとか、せいぜい日遮林を、もちろん風通しを考えてその上でさらにそういった樹木を仕立てることによって、非常に飼いよくしているといった実例は枚挙に暇なしと申すほどでございます。これにつきましては、先年その卑見の一端を「長野県農会報」に発表いたしておきましたから、今日は簡単にいたしておきたいと存じます。
 伊那の谷の養蚕業の盛んなその一つの、しかも有力な原因として、私はあそこが、その風のよく吹
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