参円についている。
そこで変だとは思ったが、あまり高価なので何かの間違いではないかと思ったので訊いて見た。すると先方では、「いや別に間違いではない。なんでもこの木のある処は深山で、しかも棘のたくさんある木で、しかも誤ってその棘を刺すと、そこから肉が腐る。だからこの芽を採るのには、ほとんど命がけでなくては採れないそうです」と、その高価なのはいかにも当然であるといったような返事をされたのには、その高価以上に驚いてしまった。(第2図参照)
[#底本ではたらの木の写真入る]
他の会食者はいずれも東京で生れ東京で育ったものであったので、誰も彼も感心して聞いておったふうであった。そこでその私の友人は、帰郷後さっそく、一日人夫を雇って、その「たらの芽」を採って貰い、それを贈るも贈る、一|叺《かます》荷造にして先日会食した一人の方へ贈り届けた。すると間もなく、きわめて鄭重な答礼の手紙と一緒に、子供服二着、それに大人の服地一人分、合計、どう見ても時価で約四十円見当のものを贈り返してくれた。これにもまた驚いてしまった、と過般その当の本人が私に話されたことがございます。
なるほど、いかに「たらの木の芽
前へ
次へ
全53ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三沢 勝衛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング