申上げました「あざみ」にしても、あるいは「たんぽぽ」「なずな」「しうで」といったようなものにしても、「しうで」はちょっと栽培は困難のようでございますが、いわゆる「山菜の栽培」を私は強調いたしたいのでございます。もちろんそれも、まずそこの「土地土地に聞いて、」即ち、そこにどんな山草が繁茂しているかを調べて見て、その上で選択すべきであることは申上げるまでもございません。
 また、必ずしも栽培というほどの手数をかけないでも、相当の収益を挙げることのできるものも少なくはないのであります。もっともこれは特例ではございましょうが、この地方では決して珍しいものではない、かの「たらの木の芽」の話でありますが、あれが如何でしょう。これは私の友人の経験談ではありますが、先年、銀座の有名な某食堂で友人四、五名を招待して会食した時のこと、たまたまその料理の中へ、例のたらの芽が出た。わずかに二芽ばかりずつ、いかにも珍品らしくそれぞれ小皿に入れて配られた。なるほどおいしい。一同も非常に喜ばれたので、お代りを要求した。すると今度は少し大きな丼へ二〇芽ほど入れて持って来た。ところが会計の時に調べて見ると、その丼一つが
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