災害をなくすることは必ずしも不可能のことではございますまい。私はまったくの素人であって分りませんが、今後の研究は、こういった方面により多くの力を用いられるべきではありますまいか、と考えているのでございます。
 いや、こちらの態度如何によりましては、さらにその山崩れそのものを、単にそれに順応しているというだけではなく、積極的にそれを利用することさえできるのではないかとまで考えさせられるのであります。こうした事実を私は各所で見聞いたしておるのでございます。
 かの神奈川県の三浦半島の葉山の付近は、年々豌豆のはしりを市場へ出すことができ、まことによい場所として知られておりますが、御承知のように、豌豆は連作のきかない作物であるにもかかわらず、あそこの赤土が、その毎冬、毎日のように、そこの斜面にできる霜柱によってざらざらと崩れ、そこの畑へ新しい土壌を供給しますので、年々同一の畑でその豌豆が栽培せられております。また、これはきわめて各所で見ることでありますが、下伊那郡の南部地方や佐久・諏訪等では、そこの山麓にあたって切取って作られてある道路や畑地において、その春、霜溶けの際、その切取面の小さな崩壊
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