こへ道路を設けましたならば、たまたま数年に一度、あるいは十数年に一度といった大洪水によって、その谷底全部が、その川の水によって占領され、われわれ人間の力から見れば、さすがはと思われるような、コンクリートの堅牢な工事も、まことにたわいもなく、めちゃめちゃに破壊されてしまうことになります。そうして、その都度、単に道路だけではなく、その両側の谷壁を浸蝕して行くのであります。かの奈川渡から上流、釜トンネル付近までの道路において破壊の繰返されておりますのは、私は、おそらくそうしたことが最も大きな原因となっているのではありますまいかと考えております。ところが、これに対して、奈川渡から下流の道路は、きわめてよくあそこの地形に順応して造られ、御承知のように道路をぐっと高い処へ引き上げてありますので、比較的安全のように思われます。これはいま若返りつつある谷のまことに当然の帰趨なのでございます。まったく、これは一つの自然現象であり、自然の偉力によるのでございまして、私どもはただ素直にそれに従うよりほかに途はないのでございます。
 もっとも崩壊の中には、さきほど佐藤博士の御講演の中にもございましたように、わ 
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