ります。ところがそれが、壮年期の処ではその道路が谷底部に下り、老年期の処では中腹部に移るといったようになっております。それで、新道等を開鑿するような場合に、万一この条件に外れたような地点にその道路が設けられますと、開鑿後毎年のように修繕を要しまして、工費を喰って、非常な難儀をしなければならないことになるのであります。
例えば、あの上高地へ通る稲核から奈川渡、中の湯方面の梓川の谷に沿った道路について申しますと、現在、日本アルプスの地形は、その大地形から申しますと壮年期の地形でありますが、あそこが、まだその壮年期の中頃に例の回春をやりまして、現在その谷の部分では明らかな幼年期の地形を示しております。したがって、こういった場所へ道路ができるとしますれば、尾根部と申しましても、それが壮年期で再び回春しておりますから、そこには平坦面がございません。したがって、現在の幼年期の谷壁のその最高部、旧壮年期の谷底部に相当する地点、現河床部から見ますと相当高い処へその通路をあけるのが、将来一番安全な方法だと思われるのであります。それを、わずか五、六年の観察から、谷底部に多少の余裕があるからというので、そ
前へ
次へ
全53ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三沢 勝衛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング