な感謝を持って報いられ、ついにその河岸に「春野神社」として祀られるようになり、今もなお現存しているとのことでございます。
 この「川に訊いて見てやる」という、その思想がまことに大切なのでございます。
 ある山の麓に道路を作ろうとする場合、その道路の両側の勾配をどの程度にまで急にしてよいかは、その付近の地形を調べ、その地形のもつ勾配に順って、ならって、すなわち「聞いて」決めるべきであるということは、すでによく言われていることであります。
 各地に地辷りとか、山崩れとかができる。これについてのその対策にしてもまた同様で、やはりそこの山なり谷なりにまず訊いて、その上で着手されるということが大切だと存じます。
 これを、われわれの立場から申しますと、その山崩れとか地辷りとかいうのは、いずれもそれは地盤の一種の浸蝕現象でございまして、すなわち一種の水の営力としての現れでございます。元来、この地表の水は、常にその高地に対しては浸蝕を、そうして、低地に対しては堆積という作用を営んでいるのでございます。そうしまして、その高地というのは多くは地盤の隆起により、低地というのは沈降によって持ち来たされるので 
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