性状はもちろん、電気やガスの性質に順応し得た、その賜物であると考えるのが妥当だと思います。
いやしくも川の工事をしようとするものは、まずそれをそこの川に訊き、山の工事をしようとするためにはそこの山に訊いて、その言葉に従ってするということが、いわゆる成功の捷径でありましょう。細かい地名が想い出せないで残念でございますが、高知県に春野神社という社があるそうでございます。これは、その昔、例の殖産、土木業の奨励者として有名な、かの野中兼山の当時、ある一つの河から田用水を引き上げるために、まずその河を堰き止める工事に着手しまして、その両岸から苦労して次第に堰止めて行く。ところが、いよいよあとわずかのところで堰止めきるという時になると、折角の工事がついその河の威勢で押し流されてしまう。何回となくそれを繰返しては見るが、どうしても目的が果たせない。ところがある日のこと、こうしたところへふと通りかかったのが「はるの」というお婆さんでありました。お婆さんは、そこの河岸に立止まって、暫くその工事を見ておりましたが、やがて、「これではとうていこの河を堰止めることはむずかしい」と独り言をしながら立去ろうとし
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