を持ちたいものでございます。
作物を栽培するにせよ、家畜を飼うにせよ、さては工業から商業にいたるまで、ないしは皆様の御専門の土木事業に至るまで、一方にはそこの風土を調べ、一方にはその作物、家畜、製作品、土工の性質を究め、できるだけその両者の調和し融合するようなものを選択し、取込んで来るということが、言い換えますれば、きわめて自然に近いような形に整えて行くということが最も意義のある地方開発というもので、われわれ人間はただ素直に一種の「触媒」としての役割を持っているものとして考えておってこそ、真に人間としての、すなわち天命の役割を果たし得たものと私は考えかつ信じているのでございます。
要するに、自然を征服するどころの話ではない。また、もちろん征服のできるものでもございません。否、かえってその「自然を生かそう」とする思想こそ、きわめて大切であると考えたいのでございます。そうしてそれが、やがて、真に力強くわれわれ「人間の生きる途」ともなるわけでございます。そうしてまた、真にそれを生かす、これをわれわれ人間本位の言葉で申しますと、「利用する」ためにはすべてそれをその大自然に聞いて、すなわち順応し、協調して行くのが、そもそもの本体であると考えなくてはならないと思うのでございます。
科学の研究は、なにも自然を征服する武器を発見するためではない、自然への順応する途を求めるための努力でなくてはならない、と私は考えているものでございます。「地方の開発もその自然に対する、正しい認識から」ということを、常に私はモットーといたしているものでございます。先年来、「自力更生」という考えが奨励され普及されて参っております。まことに結構のことには違いありませんが、その自力更生も、さらにその根底に「自然力更生」という強い念願があってこそだと私は確信しているのでございます。
私は、本日皆様にお目にかかり得たこれを機縁に、満堂の皆様の御助勢を仰ぎまして、われわれ人類が、そのあらゆる活動に際し、その大自然を背景として立とう、常に大自然に相談をし、大自然、すなわち神の命にすなおに順って活動し、自然も生かし、同時に人間もよりさらに大きく生き得る、さらに言葉を換えて申しますれば、真に「神人合一」の心境で、より人間を偉大にかつ幸福なものにするような、そういった将来を念願して止まないものでございます。
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