でございます。また地質的には水成岩の地方よりもとくに花崗岩系、すなわち深成岩系の地域の方がより大きく隆起しつつあるようにも見えます。いったい、深成岩そのものが地表に現れているというのが、すでにそこの隆起、そうして、それに伴って働いて行くところの浸蝕の結果を実証しているわけでもございます。
こういった、隆起に伴われて浸蝕されて行くことを、地形学上からは「回春」または「若返り」と呼んでおります。そうして、この回春現象は、まずその地方の河底部に現れて参ります。河の下流から河身に沿って、そこの河床部の次第に高まって行くその行き方を調べて見ますと、遷急点といって、ある地点だけがとくにその高まり方が急になっている処がございます。そういった遷急点が、その河身の中に幾ヶ所あるかということで、だいたいその地方の回春の因数を決定することもできます。わがこの信州の中だけでは、どの河にも二、三ヶ所、とくにその明瞭な処が現れております。
またそういった回春現象は、ひとり河だけではなく、そこの河の両岸に、かの段丘地形となって現れて来ております。したがって、これもまた、大きくは二、三段に区別することができますが、天竜川の両側のように、さらにその各段が、また幾つにも細かく分かれている処もございます。とにかくいずれも地盤の隆起や沈降と、それに伴う浸蝕や堆積の結果として現れたものでございます。さらにまた、古い地形の処では、かの山の尾根の、その傾斜の角度の変化の上にも現れて来ております。あまり専門にわたりますから略しますが、こういった地盤の変動や河川の働きによって、もちろんこのほかいろいろの働きも手伝ってはおりますが、私どものこんにち目の前に見ておりますような地形ができているのでございますが、私どもはその地形の発達程度によりまして、それを幼年期、壮年期、老年期の三つに分けております。
そうしてもし、こういった地形の処へ道路をあけるとしましたならば、それぞれその地形の幼・壮・老によって、そのあける場所がほぼ定まっているのであります。それは、幼年期の地形の場所では、道路はそこの尾根部に開かれるのが普通であります。もっとも尾根部といっても、幼年期の地形では谷はごく狭く、そこの谷底はほとんど全部河床となっており、両岸もまた絶壁に近いような急斜面であるのに、かえって尾根部には広い平坦面さえ持っているからであ
前へ
次へ
全27ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三沢 勝衛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング