い》を握れる余の手は、その響を受けて非常なる痛みを覚え、鉄槌の下る事七八|度《たび》目《め》にして、余は遂にたええずその手を放てり、たちまち見る入口の一方は砕けたり、仰げば悪鬼のごとき海賊の顔見ゆ、たちまち二三人はその破れ目に手を掛け、嘲笑うがごとき奇声を放って蓋《おおい》を引起せば、蓋《おおい》はギーと鳴って開くこと五寸! 一尺! 一尺五寸、剣《つるぎ》を逆手に握れる海賊の一人は、眼を怒らして余を目懸けて飛び込まんとす、もはや絶対絶命なり、余は思わず呀《あっ》と叫んで船底に逃げ込まんとせしが、その途端! 天地も崩るるがごとき音して、船はたちまち天空に舞い上り、たちまち奈落に沈むがごとく、それと同時に、余は梯子の中段より真逆様に船底に落ち込み、失敗《しまっ》たと叫びしまでは記憶すれど、その後は前後正体もなくなったり。
七
気絶せる間は眠れると同じくまた死せると同じく。時刻のたつを知らず、それより一時間過ぎしか一日過ぎしか、それとも一週間以上過ぎしやを覚えねど、余は夢ともなく現ともなく、ふとしたたかに余の頭を打つ者あるように感じて眼を開けば、余はなお生きてあるなり、心
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