下げ終わり]
と、このような小説的の記事を読んで、満都の人々は非常な好奇心と同情を持って、今日の二勇士の首途《かどで》を見んと、四方から雪崩《なだれ》のごとく押しよせて、すでにその日の九時頃には、さしもに広き公園も、これらの人々を持って埋まって終《しま》った。
十一時頃に至って、秋山男爵と、雲井文彦は各従者一名を従え馬車を駆って、徐々《しずしず》と入り来った。
一通り自分の飛行船の各部を詳細に検査して、見送りの人々に一礼してその中に這入って、静かに号砲の鳴るのを待ち構えている。
観衆はいずれも息を潜めて瞻視《みつめ》ている。
やがて時計の長短針が一つになって十二時を指すと、音楽堂の上から一発の砲声が轟《とどろ》いた。と思うと大鷲《おおわし》のごとく両翼を拡げた飛行船は徐々に上昇し初める。
「万歳※[#疑問符一つ感嘆符二つ、41−上−15]」
「秋山男爵の成功を祝す。」
「雲井文彦君万歳※[#感嘆符三つ、41−上−17]」
と一時に破れるばかりの拍手と万歳の声が起って、いずれも帽を投げ、手布《ハンケチ》を振ってその首途を祝した。
飛行船は始めその両翼を静かに動かしながら徐々に上
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