念がむらむら[#「むらむら」に傍点]と起って、急ぎ懐中洋燈を点じて見ると、
「や。や。」
誰も居ない※[#感嘆符三つ、47−下−6]
洞穴の中は虚《から》だ※[#感嘆符三つ、47−下−7]
ただ一人杉田の亡骸《なきがら》のみが残っている。
「失念《しま》った※[#感嘆符三つ、47−下−9]」
と叫んで暫時我を忘れて茫然としたが、たちまち気を取り直して、側に放《な》げ棄てておいた自分の鉄砲を取り上げるや否や、駆け出そうとすると、何物にか躓《つまず》いてばったり仆れた。
はっと思って再び洋火《ランプ》を点じて見ると、
東助だ※[#感嘆符三つ、47−下−15] 東助が銃を持ったまま俯伏せに仆れている※[#感嘆符三つ、47−下−16]
文彦は矢庭にそれを抱き起して、
「東助※[#感嘆符三つ、47−下−18] どうしたんだ、慥《しっか》りしろッ。」
と声をかけながら、気付を呑ませるとようよう息を吹き返したと思えば突然《いきなり》、
「畜生、逃がしてなるか。」
と立ち上ろうとするのを慥りと抱き止めて、
「これ東助。僕だ、文彦だ。この様子は一体どうしたのだ。」
と尋ねると、東助はこの声を
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