身体を動かしながら、如何にも苦しげに唸いているのだ。
文彦は何を思ったか、銃をそこに投げすてて、その側に駆けよって、電気ランプを点した。
四辺が一時にパッと明るくなった。仆《たお》れているのは二人の洋装の男子である。
文彦はそのランプの光で二人の顔をすかし見たが、
「あッ」
といったきり、洋燈《ランプ》をそこに取り落して終った。この様子に東助は吃驚して駆け寄りながら、
「もし若旦那様どうなさりました。もし若旦那様。」
といわれて文彦はようように気を取り直して我に還ったが、再びその人に縋り付いて、
「叔父さん。僕です、文彦です。気を慥《たし》かに持って下さい。文彦です。文彦です。」
といいながら抱き起す。
東助も始めてそれと心付いて、
「おお篠山の旦那様でございますか。どうぞ慥《しっか》りなさって下さい。若旦那様と東助がお迎に上りました。もし、」
と縋り付いて耳元で声をかける。
「薬※[#感嘆符二つ、1−8−75] 水を早く※[#感嘆符三つ、46−上−8]」
「はい。」
と東助がさし出す気付を口に入れて、吸筒《すいとう》の水を呑ませると、今迄息も絶え絶えに唸いていた博士は、ようよ
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