かに歩んで彼《か》の青い光の直《す》ぐ側に行って見ると、更に意外である、幽霊火と見えたのは其様《そん》な恐ろしい物では無く、一個の青色球燈が樹《き》の枝に吊《つる》してあり、其真下の地面には、青い光に照されて、一尺四方ばかりの奇妙な箱が置いてあった。
「オヤ不思議だこと、先刻《さっき》の流星が此様《こん》な物を落して行ったのではありますまいか、不思議と云えば此箱こそ実に不思議なもの、持って帰って阿父様《おとうさま》に御覧に入れましょう」と、露子は其箱を持上げて見ると非常に重かったけれど、夫れを両手に抱えて家に帰って来た。
 三人の娘が尽《ことごと》く帰って来たので、父伯爵は一同其居間に呼び、先《ま》ず一番目の娘に向い、
「和女《そなた》は森林を探検して、何も不思議な物を見なかったか」と問えば、一番目の娘は澄ました顔で、
「ハイ、林中には立木と草のあるばかりで、隈《くま》なく探検しても少しも不思議な物は見えませんかった」と答えた、二番目の娘も同じ様に答えた、すると伯爵は三番目の娘に向い、
「和女《そなた》も矢張り不思議な物を見なかったか」
 と云うと、三番目の娘露子は、携えて来た彼の奇妙
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