もかれこれ十二時に近く、林中には相変らず梟《ふくろう》の鳴声も聴《きこ》えて、其|物凄《ものすご》い事は限りもなかったが、露子は意を決して真暗な林中に入って行った、入って見ると、歩行も左程《さほど》困難では無く、彼女は何んでも約束通り探検を果そうと思う一心に小さな角燈の光に路《みち》を照して彼方此方《かなたこなた》[#ルビの「かなたこなた」は底本では「かなたあなた」]と歩いて居る内に森林の入口から凡《およ》そ四五町も来たと覚《おぼ》しき頃《ころ》、前方に当り一個の驚くべき物を発見した、それは地上三尺ばかりの所に、一点の青い光が幽霊火の如《ごと》く輝いて居るのである。
露子はギョッとして立止った、今頃この淋《さび》しい林中に、あんな光の点《とも》って居る筈《はず》は無い、実に不思議千万である、イヤ不思議なばかりでは無く、誰《だれ》でも恐ろしく思うだろう、露子は最《も》う此処《ここ》から逃げ帰ろうかと考えたけれど、夫《そ》れでは充分に探検したものと云《い》われない、彼女は此《この》場合にも父君との約束を胸に浮べ、妖怪《ようかい》であれ幽霊であれ、是非その正体を見届けねばならぬと決心し、静
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