に独り思うには、此林中には立木と草のあるばかり、流星が此処《ここ》で消えたとて何んの不思議な物が落ちて居るものか、好奇《ものずき》に此様《こん》な気味の悪い森林に入るよりは此儘《このまま》此処から家に帰り、阿父様に林中の有様を問われたら、森林を残る隈《くま》なく探検しましたが、唯だ立木と草のあるばかりで、不思議な物は少しも見えませんかったと答えよう、此方が余程利口であると、娘の癖に狡猾《ずる》い事を考え、来る時の足の遅さとは反対に、飛ぶ様に家に帰って来た。
 次に行《い》ったのは二番目の娘であったが、此娘は姉様より更に臆病《おくびょう》なので、森林の側まで行くか行かぬに早や身慄《みぶる》いがし矢張り姉様と同じ様な狡猾い事を考え、一目散に家に帰って来た。

  三 流星の落し物

 今度は三番目の娘|露子《つゆこ》の番である、露子とて年若き娘の身の、何んで夜の恐ろしさを感ぜずには居よう、けれど彼女は極《ご》く正直な性質なので、一旦《いったん》父君に森林を探検して来ると約束した以上は、たとえ生命《いのち》を取られても其《その》約束を果さねばならぬと思い、森林の側《そば》まで来た時は夜《よ》
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