した者をば、今夜一番勇ましい振舞をした者と認め、私は玉村侯爵に代り此《この》腕環を与える事としよう」
「まあ厭な試験方法ですこと」と、一番目の娘も二番目の娘も叫んだ。
「厭なら仕方が無い、権利を放棄《ほうき》する迄《まで》さ、其代り此腕環を貰《もら》う事は出来ないぞ」
腕環の貰えぬのは閉口である、「それなら参りましょう」と二人共答えた。
伯爵は三番目の娘の露子《つゆこ》に向って、
「露子、和女《そなた》は何うじゃ」
露子は此時初めて口を開き、
「ハイ、妾《わたし》何んだか恐《こわ》い様に思いますけど、阿父様の仰《おっ》しゃる事なら参りましょう」
斯《か》くて相談は定《き》まり、三人の娘は一人ずつ流星の落ちた森林を探検する事となった。
先《ま》ず一番先に出かけたのは一番目の娘であったが、唯《た》だ一人小さい角燈を下げて家を出ると、朧月夜に風寒く、家を離れれば離れる程|四辺《あたり》は淋しくなって、やがて森林の側《そば》まで来て見れば、林中は真暗で何んだか化物《ばけもの》でも潜んで居るよう、何うしても踏み込んで探検する気にはなれず、一歩進んでは二歩退き、二歩進んでは三歩退き、其間
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