番勇ましい事をするか、私《わし》は夫《そ》れを試験する役目を帯びて居る」
「何《ど》んな試験をなさるのです」と、一番目の娘は問うた。
「サア、何んな試験をしたら宜《よ》かろう」
二番目の娘は父伯爵の顔を見上げ、
「そして阿父様《おとうさま》、玉村侯爵のお手紙に依《よ》ると、この黄金の腕環を得た者は、同時に更に多くの宝物を得べき幸運を有すと書いてありますが、その宝物とは何んなものでしょう」
「どんな物かは、夫れは後で分るだろう、兎《と》に角《かく》私《わし》は今、頻《しき》りに今夜の試験方法を考えて居るのだ」と、快活なる伯爵は小首を傾けて、凝乎《じっ》と窓から外を眺めて居る、何うも其《その》様子が何んだか意味有り気なので、三人の娘も眼《まなこ》を上げて、窓の硝子《ガラス》を透して外を眺めると、今夜は朧月夜《おぼろづきよ》であるが、既に夜は更けて天地万物眠れる如《ごと》く、遥《はる》か彼方《かなた》の森林では、梟《ふくろう》の鳴く声[#「声」は底本では「聞」]も聴《きこ》え、実に物凄《ものすご》い程静かな有様である。
途端《とたん》! 一同は思わずハッとした様子、それは何故《なぜ》かと
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