じぶん》のからだはひどく煽《あふ》られはじめた。〔ああ、ヱヴェレストはまだ遠《とほ》いらしい。〕ペンペは悲《かな》しい聲《こえ》を[#「聲《こえ》を」は底本では「馨《こえ》を」]あげて泣《な》きだしたが、自分《じぶん》の聲《こえ》を聴《き》いて救《すく》ひに来《く》るものも無《な》いのかとおもふと、腹《はら》が立《た》つて、頭《あたま》の中《なか》が茫《ぼう》ッとして来《き》た。ラランのやつに欺《だま》されたと気《き》づいても、可哀《かあい》さうなペンペはその抉《えぐ》られた両方《りやうほう》の眼《め》から血《ち》を滴《したた》らすばかりだつた。もうラランの名《な》も呼《よ》ばない。羽搏《はばた》く元気《げんき》もしだいに減《へ》つて、たゞ疲《つか》れはてたからだは、はげしい霧《きり》のながれに乗《の》つて漂《ただよ》つてゐた。そのとき、ラランの悪《わる》はずつとペンペを離《はな》れて、上《うへ》の方《ほう》を飛《と》んでゐた。ラランはフト羽《はね》を休《やす》めて下《した》を見《み》た。
ペンペのからだが黒《くろ》い小《ちひ》さな點《てん》になつて、グーッグーッと錐《きり》を揉《も》
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