へ》つて僕《ぼく》はもう目《め》が廻《まは》[#ルビの「まは」は底本では「まほ」]りそうだ』
ラランはすまして答《こた》へた。
『さういふ眼玉《めだま》を喰《く》つたまでさ。そのほかに何《なに》があるものか。』
馬鹿《ばか》なペンペは欺《だま》されるとも知《し》らずに、また片方《かたほう》の眼玉《めだま》をたべてしまつた。もう四千メートルに近《ちか》い霧《きり》の中《なか》だ。たうとう盲目《めくら》になつたペンペは、ラランの姿《すがた》を見失《みうしな》ひ、方角《ほうがく》も何《なに》もわからなくなつて、あわてはじめたがもう遅《をそ》かつた。
『ラランよ、ラランよ、』と叫《さけ》ぶ。
ラランの奴《やつ》は意地悪《いじわる》[#ルビの「いじわる」は底本では「いさわる」]く上《うへ》へ上《うへ》へとペンペの頭《あたま》の上《うへ》を聞《き》こえないふりして飛《と》んでいつた。ペンペはすつかりベソをかいて、繰《く》り返《かへ》しラランの名《な》を呼《よ》んだが、その返事《へんじ》がないばかりか、冷《つめ》たい霧《きり》のながれがあたりいちめん渦巻《うづま》いてゐるらしく、そのために自分《
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