火を喰つた鴉
逸見猶吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)西蔵《チベット》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)千|年位《ねんぐらゐ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)喰《た》[#ルビの「た」は底本では「あ」]べてゐた。
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 西蔵《チベット》は世界《せかい》の屋根《やね》といはれてゐるほどで、国《くに》全体《ぜんたい》が高《たか》い山々《やまやま》の連《つらな》りだ。その山々《やまやま》の中《なか》でも群《ぐん》を抜《ぬ》いて高《たか》く、西蔵《チベット》の屋根《やね》ともいはれるのが、印度《インド》との国境《こくきやう》に跨《またが》るヱヴェレスト山《ざん》である。その頂上《てうじやう》には古《ふる》い昔《むかし》から、大理石《だいりせき》のやうに硬《かた》くて真白《ましろ》な雪《ゆき》が凍《こほ》りついてゐて、壁《かべ》のやうにそゝり立《た》つ、そこまで、まだ誰一人《だれひとり》攀《よ》ぢ登《のぼ》つた者《もの》がない。さういふ天《てん》の世界《せかい》にとゞくやうな、空気《くうき》の稀薄《うす》い
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