》さまにこれはまた一|羽《は》の鴉《からす》がパチパチ燃《も》えてる篝火《かがりび》の中《なか》に墜《を》ちてきた。もちろんそれはヱヴェレストの怒《いか》りに触《ふ》れた、ラランの気《き》を失《うしな》つた姿《すがた》であつた。回々教《フイフイけう》の旅行者《りよかうしや》たちはすつかり面喰《めんくら》つて、ラランを火《ひ》の中《なか》から引《ひ》き出《だ》したが、やつと正気《しやうき》づいたラランは舌《した》の自由《じゆう》がきかないほど、口《くち》の中《なか》を火傷《やけど》してゐた。カラカラと笑《わら》ふどころではなかつた。そこでペンペの話《はな》しを聞《き》いたラランは、深《ふか》く自分《じぶん》の悪《わる》かつたことを悔《く》いて、ペンペを葬《ほほむ》つてくれた旅行者《りよかうしや》たちにすべてを懺悔《ざんげ》した。翌朝《よくてう》、旅行者《りよかうしや》たちは天幕《テント》をたゝんで北《きた》の方《ほう》に発《た》つた。ラランはそのみにくい姿《すがた》のまゝ残《のこ》された。暫《しばら》くして、ラランはその[#「その」は底本では「そ」]弱《よは》つたからだを南《みなみ》へ向
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